運命の扉
「何から何まで…今日は本当にありがとう。」

「お礼言われるほど何もしてないよ。」
「ううん。凄く……気持ちが救われた。」
「役に立てて良かった。」

優しい微笑みを向けられる。

このままじゃ嫌だな。
何かお礼がしたい。
あたしは歩く足を止め、敬ちゃんを見上げた。

「敬ちゃん……お礼がしたい…。」
「お礼?」
「あたし、あのまま優斗といたら…きっと、どうしていいかわからなかった。」
「いいよ。気持ちだけもらっとく。」

迷惑…だったかな。

肩を落とし俯くと、敬ちゃんは戸惑って言葉を探し始めた。

「俺は、莉奈のその言葉だけで嬉しいから……その…。」

あたしが顔を上げると、耳の後ろを触りながら真剣な目をした。

「でも、どうしてもお礼がしたいって言うなら……来週の日曜日、俺とデートして欲しい………」

デート…。

「部活、その日だけ休みなんだ。」

もっと敬ちゃんを知りたい。
素直にそう思った。
だからあたしは……

「うん。」

ゆっくりと首を縦に振ったんだ。
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