運命の扉
ブーブーブーと携帯が振動する。
きっと…莉紗だ。
鳴っているのはあたしの携帯じゃなく―――
優斗のもの。
「鳴ってるよ…」
「…莉紗だろ……」
「莉紗なら出なきゃ。」
優斗はあたしを片腕で抱きしめたまま電話に出た。
「もしもし」
『優斗?遅いから…心配しちゃった。今どこ?』
「今?家だけど…」
『えっ……?…莉奈も一緒なの………?』
通話口から莉紗の声が聞こえてくる。
「違うけど。」
『そっか。』
コイ…してる声。
「あいつ…まだ帰ってないの?」
『一緒に帰ってきたんじゃないの?』
「途中で真中が来たんだ。だから俺は先に帰ってきた。」
『真中くん?そっか…!今頃2人切りなのかな?』
違うよ……
あたしは今…
優 斗 に 抱 き し め ら れ て る ん だ よ 。
「どうなんだろうね。…なんでそんな嬉しそうなわけ?」
『だって、莉奈が幸せになれたら、莉紗も幸せだから。』
ほら。
莉紗はいつでもあたしを想ってくれてる…。
「……………」
何やってんだろ…
今の情況が莉紗を裏切ってることなんてわかってんのに…。
『優斗?』
「電話切るよ?もうすぐ行く。」
『うん!待ってるね。』
パタンと携帯を閉じる音が聞こえる。
「離して……」
「そういうことか…」
「そういうこと?」
「いくら考えてもわからなかった問題が…解けた。」
問題?
なにそれ。