年下カレシに蜜な罠
この時、私は気が付かなかったんだ。
傷口の上に小さく付けられたキスマークに―――
「…ごめん、瑠璃…」
「…うっ、ふぇ…っ」
本当は、すぐ走り去ってしまいたかったけど…。
なんだか出来なかったんだ。
あの頃の…、楽しかった思い出が邪魔をして。
遊くんは、大切な幼なじみだったから……。
「ごめん、瑠璃…俺…、」
喉の奥から絞り出すような切ない声で何度も謝られて、
私はいつの間にか抱きしめられて広い胸の中に納まったまま、
――押し返すこともできなくて、ただしゃくりを上げながら泣くことしか出来なかったんだ。