年下カレシに蜜な罠
◆12*Honey
――タンッ!
いつの間にか、走り出していた俺はその壁の向こう側へと
一歩、踏み出す。
「……あれ?」
そこに、瑠璃の姿はなかった。
見間違え、かな?
そう一瞬考えたものの――
あの、残像は確かに瑠璃だ。
壁に消える前の一瞬。
慌てた表情をした瑠璃を、まだ思い出せる。
――クスッ。
瑠璃が何しに来たのかは知らないけど。
帰りに聞けばいいか。
くるっと、方向回転をした時。
「卯月くん」
名前を呼ばれて、振り向いた。