鬼憑き
カロンの目は、ここにきて一段と輝いている。行き交う人や道いっぱいに並んでいる店、飛び交う会話。初めての物ばかりが揃っていた

「市は初めてか?」

「はいっ!」







ちょうどよく市が開かれる日だったため、二人はカロンを連れてきた。キョロキョロと忙しなく動く姿は年相応で楽しそうなことこの上ない。二人の表情も知らず緩んでいた

「あれってなんですか?」

カロンが指さした先には、割りばしの先に可愛らしい動物がついたものが並んでいた

「飴細工だな。こいよ、買ってやるから」

ちょうど今はしにつけられたばかりの柔らかい飴が、ちいさなはさみによって姿を変えていく。はしの上には見事な羽を広げた鳥が静かに止まっていた

「おっちゃん、こいつに一つ作ってくれよ」

「あいよ。ぼうず、何が作ってほしいんだ?」

「えと・・犬、で」






白っぽい飴ははしの上で回され、切られ、のばされ、立派な犬が忠犬よろしく座った姿で落ち着いた




「ありがと」

受け取ったカロンは、なんとも幸せそうだ

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