鬼憑き
「あ~、確かに言ったな。一人二人出てもって。だからってなぁ・・・これはいじめだろうよ」
武人の目の前にあるのは、ちょうどこの時間なら子供たちがたくさんいるはずの、割と広めの公園。今は子供どころか人の姿がなく、その代りに人と同じ姿をしているモノが三人、入口の石塀の周りに集まっていた。なんとも楽しそうに笑ってはいるが、そこからは明らかな殺意が武人に向けられていた。
「何一人でごちゃごちゃ言ってんだよ」
「いいだろ別に。そういう気分なんだよ」
「まぁいいじゃねぇか。どうせこれから死ぬんだからな」
武人の表情がこわばる。唾をひとつ飲み込んだ。
(勝ち目ってか・・・・生き延びれるか?これ・・)
すでに変形しているのか爪が異様に鋭く長いのが一人、口内に収まっていない舌と牙を持ち、体のいたる所に鱗が見えるのが一人。もう一人は見える場所に変化はないが、どれも戦闘向きの能力と性格を持ち合わせているとみて間違いなかった。
「で、どう楽しむよ?」
「一人だけだからな」
「気にすることないだろ?」
三人目の声だけ、武人の耳元で聞こえた。そのまま武人が後ろに数歩下がると、地面に穴があいた。鱗がついた手を持ち上げ、土を振り払う。
「好きに殺っちゃえばいいんだって」
恐ろしい笑顔とは不釣り合いなほど無邪気にそう言ってのける。武人の顔を嫌な汗が流れ落ちた。
「なんか反応よくね?こいつ」
「楽しめそうじゃねぇの」
(マジでやばそうだな・・)
武人はゆっくりと息を吐き、次から来るであろう攻撃に備える覚悟を決めた。
「おら、いくぜ!」
武人は振りかざされてくる爪を避けながら残り二人の動きを見る。が、ある程度離れた場所から見ているだけで何も仕掛けてくる気配が無い。不意に武人の肩口を相手の爪がかする。裂けた服の隙間から滲み出す血に軽く舌打ちをする。
「おいおい。よそ見してる何ざ、随分と余裕じゃねぇか」
脇からの衝撃に宙に舞う武人の身体。咄嗟のことに受身も取れず、アスファルトにまともに叩きつけられる事になった。一瞬伸びきった武人の身体は次の瞬間には丸まり、激しく咳き込んだ。
「何もしないで見てる、なんて言ってないよ?目を離しちゃ駄目じゃないか」
穏やかな表情を浮かべる男は、やはりどこも変化している様子は無かった。ただ両手の周りを、何かもやもやした光が包み込むようにしてそこにあった。鱗に覆われた腕が蹲る武人に伸び、頭を掴み取ると、そのまま武人の身体を持ち上げて宙吊り状態にした。掌には容赦なく力が籠められ、武人の口からは声にならない呻きが漏れた。
武人の目の前にあるのは、ちょうどこの時間なら子供たちがたくさんいるはずの、割と広めの公園。今は子供どころか人の姿がなく、その代りに人と同じ姿をしているモノが三人、入口の石塀の周りに集まっていた。なんとも楽しそうに笑ってはいるが、そこからは明らかな殺意が武人に向けられていた。
「何一人でごちゃごちゃ言ってんだよ」
「いいだろ別に。そういう気分なんだよ」
「まぁいいじゃねぇか。どうせこれから死ぬんだからな」
武人の表情がこわばる。唾をひとつ飲み込んだ。
(勝ち目ってか・・・・生き延びれるか?これ・・)
すでに変形しているのか爪が異様に鋭く長いのが一人、口内に収まっていない舌と牙を持ち、体のいたる所に鱗が見えるのが一人。もう一人は見える場所に変化はないが、どれも戦闘向きの能力と性格を持ち合わせているとみて間違いなかった。
「で、どう楽しむよ?」
「一人だけだからな」
「気にすることないだろ?」
三人目の声だけ、武人の耳元で聞こえた。そのまま武人が後ろに数歩下がると、地面に穴があいた。鱗がついた手を持ち上げ、土を振り払う。
「好きに殺っちゃえばいいんだって」
恐ろしい笑顔とは不釣り合いなほど無邪気にそう言ってのける。武人の顔を嫌な汗が流れ落ちた。
「なんか反応よくね?こいつ」
「楽しめそうじゃねぇの」
(マジでやばそうだな・・)
武人はゆっくりと息を吐き、次から来るであろう攻撃に備える覚悟を決めた。
「おら、いくぜ!」
武人は振りかざされてくる爪を避けながら残り二人の動きを見る。が、ある程度離れた場所から見ているだけで何も仕掛けてくる気配が無い。不意に武人の肩口を相手の爪がかする。裂けた服の隙間から滲み出す血に軽く舌打ちをする。
「おいおい。よそ見してる何ざ、随分と余裕じゃねぇか」
脇からの衝撃に宙に舞う武人の身体。咄嗟のことに受身も取れず、アスファルトにまともに叩きつけられる事になった。一瞬伸びきった武人の身体は次の瞬間には丸まり、激しく咳き込んだ。
「何もしないで見てる、なんて言ってないよ?目を離しちゃ駄目じゃないか」
穏やかな表情を浮かべる男は、やはりどこも変化している様子は無かった。ただ両手の周りを、何かもやもやした光が包み込むようにしてそこにあった。鱗に覆われた腕が蹲る武人に伸び、頭を掴み取ると、そのまま武人の身体を持ち上げて宙吊り状態にした。掌には容赦なく力が籠められ、武人の口からは声にならない呻きが漏れた。