もう一人の僕。
陽が登れば朝がくる。
僕はいつもの時間、いつもの目覚ましに起こされる。
ジリリリリッ…
…と鳴り響く目覚まし。
 
『起きないの…?』
 
ユタカが言う。
これもいつものこと…
 
『なに、ナレーションに熱中してるのよ!』
 
いや、これからしばらくは…
 
『それより早くしないと学校遅れるよ!』
 
「はいはい、今行きますよぉ…」
 
僕は声を出した。
今は自分の部屋だから誰もいない…
独り言のように呟いても、誰も見ていなければ良い。
ムックリと起き上がると、着替えはじめた。
 
『きゃぁ…?!////』
 
なんだか黄色い声が脳内にこだました。
 
なんだよ、いつも見てる癖に…
 
『なによ!わたしだって一応、可憐な女の子なのよ!』
 
はいはい…
思いながら、着替えを続ける。
 家を出た。
これから学校に行くのだが…
 
『ねぇ、暇なんだけど…』
 
あぁ、そうだね。そうですね…
 
『なに?わたしが暇だって言ってるのに、意識を貸してくれないの…?』
 
そう、僕と彼女は一つの脳を二人で共有しているために意識の貸し借りができる。
つまり、僕が彼女に意識を渡せば、僕の身体は彼女が操ることになる。
逆も然別(しかり)。
 
『豊、まだナレーションしてるの?』
 
いいじゃんか!読者に解るように説明しなきゃ…
 
『あぁ、そう…』
 
ドプンッ…
 
「あ…」
 
意識が飛んでいたため、ドブに足がハマッてしまった(汗)
 
『…だから言ったのよ…』
 
脳内にため息が響く。
 
「くそっ!」
 
苛立ちから僕は悪態をついた。
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