最大公約数

「えっと、何からやろうか?」


松田先生は首を傾げて言う。

ちょっとした仕草が可愛い。

年上には思えない。

何からやろうかなんて優柔不断もいいところだ。

何からとは、一体どういう意味だろう。


「ぼくは、物理、化学、数学を受け持つんだけど、どれからやりたい?」


ああ、そういう意味ね、と納得しながら、何でもいいです、と小さく言う。


「じゃあ、数学からやろうか」


と目を輝かせて言う。

本当に数学が好きらしい。

あたしの好きはきっと、松田先生の足元にも及ばないだろう。

先生の言葉に頷くと、数学は好き?と聞かれた。

「一応、好きです、先生には及びませんが」

と言うと、先生はそっかあ、と微笑んだ。

笑顔がいちいち眩しい。

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