あの空の、
2
「『もしかして…相沢さん、だよね?』」
「…うるせー」
俺がイライラしながらそう言うと、そこにいる全員が爆笑しだした。ヤエに至ってはヒィヒィ言っている。
(最悪…マジ最悪)
俺は心の中でひたすら毒付いた。さっきかかってきた電話は、どうやらヤエが声を変えていただけのイタ電だったらしく、つまり俺はそれにまんまとひっかかったのである。あまりに馬鹿馬鹿しい。
後ろをちらりと見ると、ヤエとその他2人は未だに俺をネタにして大笑いしていた。俺は「いいかげんにしろや」と切り出した。
「つか、お前らも止めろよ。祐介がいるのになんでこんなん…」
「だって面白そうだし」
そう言ったのは祐介だ。細ぶちフレームを中指でわざとらしく押し上げながら、ニマリと微笑む。
「そうそう、大人になれよ遥。可愛いヤエの声が聞けたんだし」
そう横槍を入れるのは圭吾だ。いつもは穏やかな癖に、こういう時になると急に調子に乗る。
「んなもん聞いても仕方ねーよ。馬鹿か」
俺がイライラした声で言うと、ヤエが「ひどー」と言ってけつを蹴る。
「いった!本気やめて、てか回りの人に迷惑だから」
そう言うと、ヤエは「あ、たしかに」と言って蹴るのをやめた。
それもそのはず、今日は地元で一番でかい祭りの日だ。ヤエ達はこの祭りに俺を誘うために電話してきたようだ。暇だったので、とりあえず来てみたが、人の多さに辟易する。