あの空の、







「『もしかして…相沢さん、だよね?』」





「…うるせー」





俺がイライラしながらそう言うと、そこにいる全員が爆笑しだした。ヤエに至ってはヒィヒィ言っている。



(最悪…マジ最悪)




俺は心の中でひたすら毒付いた。さっきかかってきた電話は、どうやらヤエが声を変えていただけのイタ電だったらしく、つまり俺はそれにまんまとひっかかったのである。あまりに馬鹿馬鹿しい。




後ろをちらりと見ると、ヤエとその他2人は未だに俺をネタにして大笑いしていた。俺は「いいかげんにしろや」と切り出した。



「つか、お前らも止めろよ。祐介がいるのになんでこんなん…」



「だって面白そうだし」



そう言ったのは祐介だ。細ぶちフレームを中指でわざとらしく押し上げながら、ニマリと微笑む。



「そうそう、大人になれよ遥。可愛いヤエの声が聞けたんだし」



そう横槍を入れるのは圭吾だ。いつもは穏やかな癖に、こういう時になると急に調子に乗る。



「んなもん聞いても仕方ねーよ。馬鹿か」



俺がイライラした声で言うと、ヤエが「ひどー」と言ってけつを蹴る。



「いった!本気やめて、てか回りの人に迷惑だから」




そう言うと、ヤエは「あ、たしかに」と言って蹴るのをやめた。




それもそのはず、今日は地元で一番でかい祭りの日だ。ヤエ達はこの祭りに俺を誘うために電話してきたようだ。暇だったので、とりあえず来てみたが、人の多さに辟易する。
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