あの空の、
俺は、だんだん気持ち悪くなってきた。顔を触ると妙に冷たい。
「ごめん、俺家帰る。気持ち悪い」
そう言うと、圭吾と祐介は顔を見合わせた。
俺は違う違うと手を振った。
「別に怒って帰るんじゃないから安心して。俺、たまに人酔いするから、ちょっと気分悪くなって…」
そこまで言った瞬間、唐突に吐き気が襲ってきたので口に手を押さえる。
「ちょ、おい大丈夫かよ遥っ」
驚いたように叫ぶ圭吾に返す気力もなく、俺はその場でしゃがみこんだ。
(やべ、吐く…)
その時、ふわりと柔らかい感触を肩に感じてふと振り替えると、ヤエが真剣な顔で俺の肩を支えていた。
「大丈夫?出そう?」
落ち着いた声でそう尋ねるのは、こんな状況に慣れているから。
「…ちょっと、やばいかも」
絞りだすように呟くと、ヤエは俺の肩を抱きながらゆっくり背中をさすった。じんわりと背中が温まり、俺は少し安堵して息を吐く。
「ごめん、祭り2人で回っといて。私遥送ってくるから」
そう言うと、圭吾と祐介は分かったと言って頷いた。俺はチッと舌打ちをつく。
「…いいよ、俺1人で帰れるから」
俺が吐き気を必死に抑えてそう言うと、ヤエは驚いたように「え?」と呟く。
「何いってんの、こんなフラフラなのに1人で帰れるわけ…」
「いいから」
俺は油汗をTシャツの腕の部分で拭ってねじ伏せた。
「いいから、お前はこいつらと祭り行け。楽しみにしてただろ」
俺は若干ふらつきながら立ち上がり、よたよたと歩いた。自分でも、足取りがかなり危ういのが分かる。
「…じゃ、ごめんけど俺帰る…」
「私も帰る」