あの空の、




「今日、嫌がらせで誘ったわけじゃないから」



ヤエが無表情な声で呟く。
俺は、頷く。




「知ってるよ。お前そこまで嫌なやつじゃないからね」




そう言って笑うと、ヤエは歯痒そうな顔を真っ赤にして顔を上げた。
その顔がおかしくて、俺はまた笑う。



俺とヤエは、言ってみれば幼なじみ。
家はお互い歩いて1分のところにあるから、両親が同級生だったこともあり、小さい頃から兄妹みたいに育った。


だから、ヤエは俺が人酔いすることも知っていた。
幼い頃から、一緒に出掛ける度によく吐いていたから、対応が冷静になるのは当たり前だ。


それなのに、今日は珍しく祭りに行こうと誘ってきた。
今まで俺に気遣って、いつも一緒に家から花火を見てくれていたヤエが、だ。
多分何か理由があるんだろうと来てみれば、またこの様だ。



(むしろ、謝るの俺だろ)



「…なぁヤエ、俺こそごめん。こんなことになって…」



言いながらヤエを見ると、ヤエは顔を手で押さえて俯いていた。



(え、泣いてる?)



俺は焦った。
泣くほど傷つけたことなど今まで無かったのだ。



「や、ヤエ、どうした」




「……だって、」




手を外したヤエの目は真っ赤に充血していた。
大粒の涙が頬を伝う。

俺は心臓がバクンと大きく跳ねるのが分かった。




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