白いユキ



のぶが帰ってしまっても、玄関から立ち去れなくて…



ぼんやりと座り込んでドアを見つめていた。



ガチャ…


─えっ?のぶ?



「ただいま!まにあったか?」



息を上げて父が尋ねた。


「残念!さっき帰ったとこだよ?」



「はぁ〜…そうか、間に合わなかったか…」



父さんは、本当に残念そうに玄関に腰掛けると



ふうっと息を吐いてネクタイを緩めた。



「父さん?ご飯まだでしょ?」



「ああ。」



「すぐつくるから。」



立ち上がってキッチンへ向かおうとするあたしに父が声をかけた。



「そう言えば彼、のぶ君だったか?」



「父さんがのぶ君なんて、なんか変だよ?」



「ちゃんとした名前をまだ聞いてないからな…」


あたしのからかうような言い方に、少し拗ねたように父が言った。







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