白いユキ
のぶが案内してくれたのは、市街地から少し離れた場所だった。
立ち止まった先に、幼稚園みたいな建物が見える。
杏園(カラモモエン)門の横の表札には、そう書いてあった。
「これって……」
「そう、僕の育ったところ。」
あたしは、のぶに促されて中へと入った。
「こんにちは。」
花壇の手入れをしていた人にのぶが声をかけた。
「…あら、のぶくん。…と…」
その人は優しく微笑んであたしを見た。
60歳位の年配の女の人。
「あなた、ユキさんね?」
─えっ?あたしのこと知ってるの?
「いつもねのぶくんから聞いているから…想像してた通り。…のぶくんは最近ここに来てもあなたの話しばかりなのよ?」
「大切な人だって。」
「園長先生ッ!?」
のぶが慌てて叫んだ。
園長先生は、あたしの耳元に顔を近づけて内緒話をするみたいに言った。
「とっても可愛い子だっていつも言ってるのよ?」
あたしは、顔が熱くなった。
園長先生はあたしを見てにっこり笑って、
「ここじゃ何だし、中でお話しましょう。」
そう言われてあたしとのぶは、園長室へとお邪魔した。
*