白いユキ



傘を差して、学校への道を急いでいると



ヴーヴーヴー…


ポケットの携帯がふるえた。


─朝から、誰だろう?


携帯を開くとマスターからだった。



「はい」


『あっ、ユキか?』


「うん、おはよう」


『ああ、おはよう。』


「なにかあったの?」


『いや、その、…新メニューを考えたんだ。』


「それで?」


『その、…味見を頼みたいんだ。』


「………」


珍しい。
でも、マスターの料理は美味しいから食べてみたい…


「うん、いいよ。」


『そうか?じゃあ今日はだめか?』


「あ、いいよ。学校終わってからなら。」



『ああ、それでいい』



「わかった、じゃ後で。」


『ああ、ありがとう。』


電話をきってから、ふと思った。



そう言えばマスターが電話かけてくるなんて珍しい。



マスターはあまり、電話をしない。


「めんどくさいから。」


そう言っていつもよほどの用事がある時しかかけてこないし、かけたくないみたいだ。



─便利なのに。



あたしなんて、なかったらこまるけどな。



ぼんやり考えていたら、遅刻しそうな事に驚いて、傘を持ち直して走った。







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