白いユキ


母は、たったひとりの子どもになったあたしに、

全ての愛情をそそいだ。

兄と、僅かに、あたしに、向けられていた愛情両方が、─あたしひとりに向けられていった…。



それは、あたし自身にではなくて、
兄の身代わりとしてのあたしに向けられたものだった。




あたしは、それに気づいていたのに…


母に愛されることが嬉しくて─


自分で、自分の気持ちに気づかないふりをしていた。








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