白いユキ



兄が死んでからの母は、異常だった。



あたしを束縛して、



全てを監視しようとしていた。



…仕事で、いつも家にいない父。



家には、いつもあたしと、母の二人きり。



「私が、夜寝ている間に霞がいなくなったら、大変でしょう?」



母は、あたしの部屋に鍵をつけた。



中からは、決して開けられない鍵だった。



あたしが、いつも夜寝静まる頃、扉の向こうから、カチャン!と音がした。


後には、廊下を歩く足音─



2階にあるあたしの部屋の窓からは、コンクリートの地面が見えるだけで、離れた所に、庭の木があるけれど…
とてもじゃないけど、あたしには、窓からでることは、出来ないだろう。


─母さんはそれがわかっていて、鍵をかけてるんだ…。



あたしに、自由は無くなっていった。







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