白いユキ
マスターの店まで、来ると、ほっとした。
ここに来るまで、あたしも、ナツも、あれから一言も口を聞かなかったから。
あたしは、恋人と言ったナツの言葉が、頭から、離れなくて…
たとえ、冗談だとしてもナツは何を考えているのか…
わからなかった。
車を店の駐車場に停めると、
「ユキ、用事思い出したから、緒田が店に居るはずだから、、一時間程待ってて。後で、食事に行こう。」
歩いて行くナツの背中を見送って、あたしは、closeと札のかかった店のドアを開けた。
「お帰り、ユキ。」
マスターの優しい声。
「ただいま。」
微笑んで、カウンターのいつもの席に腰掛けて、あたしは、奥のカウンターの席に、女の人がいることに気づいた。
見覚えのある姿。
あたしは、体中に鳥肌がたった。
身も毛もよだつとは、このことだろう。
今日はなんて日なんだろう。
*