白いユキ




─ヤバい…めんどくさい男だ─



あたしが怪訝な顔をすると


ナツはおもむろに自分の指から指輪を外した。



「……」


「ごめん、これは職場での女除けで、俺はまだ独身です。」


ニヤッと笑ってそう言った。



「びっくりした?」


「…女に声掛ける時に…指輪は外した方がいいよ?」



あたしは自分が早とちりしていたんだと

独身と言ったナツの言葉にちょっとほっとした自分がいて─


そんな自分になんだか可笑しくなって、笑ってしまった。




─…笑うのなんて久しぶりだ─



「─ユキちゃん笑うと可愛いよ。」


「……」


口説きの上等文句に顔が…赤くなる。



ナツの視線が恥ずかしくて前を向くと─



カウンターの向こうに─
あたしとナツのやりとりを見て複雑な顔をしたマスターがいた。







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