白いユキ



人のざわめく声に、閉じていた目をゆっくり、開けると…



離れた所に、倒れ込む人が見えた。



血だらけで、ピクリとも動かない。



その人の着ている服にあたしは、目が釘付けになった…



見覚えのある、服…あれは、…



頭に浮かんだ名前に、あたしは、全身の血の気が引いて、体が、ガタガタと震えだした。



「イ、イャアアアアーーーーッ!!!!」



体を抱え込んで、震えるあたしの耳に



「事故だ!!救急車をッ!!!」



誰かの、叫び声が響いていた。





─母さん…!



あたしは、目に映る、倒れるその人を、だだだだ見ていた。






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