ペロ
エゴイズム
丸の内線の新宿御苑駅を降りると靖国通りを越え、細い路地へ入る。
少し入り組んだ閑静な住宅街にそれを見つけると、迷わずチャイムを押した。
『はーい? 』
陽気な声で出てきたのは、歳のころは50になるかならないかの派手だが美しい婦人だ。
栗色の髪をきちんと巻いて、薄いピンク色のレースのブラウスを着ている。
『突然すみません。こちらは堂島さんのお宅ですか? 』
「はい・・・ 何か? 」
婦人は頭を傾ける。
『失礼ですが、奥様でいらっしゃいますか?』
「ええ、そうです。主人のお知り合いかしら?」
『以前、ご主人様に腕時計を直していただいたことがありまして、たまたま近くに来たので・・・』
婦人は、もうじき戻るから上がってくれと、梶原を中へ招いてくれた。
差し出された、ベージュ色の麻でできたスリッパを履く。