ペロ

「美保子、ちょっと外してくれないか・・・? 」

『待ってください。 美保子さん・・・ 奥様にも、聞いていただきたいんです。 』

梶原は慌てて遮った。 全身から嫌な汗が吹き出している。


「なんだい君はっ 随分図々しいじゃないか? 」

堂島は手をブンブンと払い、妻に外へ出て行けと合図を送る。

美保子婦人は動いていいかどうかわからずに困惑している。

『美保子さんっ 貴女も話しを聞くべきです!
この犬のために、なんの罪もない人々が、沢山亡くなっています、
貴方たちがしたことは・・・ 』


ドスンッ。


梶原の視界が宙を拝む。

痛みにもがき、横に転がると、堂島の足元が見えた。

顔を上げると、顔を真っ赤にした堂島が大きな洞穴のような眼を下に向けている。







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