ペロ

「一体何を言うんだ? その犬は別れた女房が引き取ったんだ。

私達には関係ないんだよっ さっさと帰れっ 」

梶原は腕に力を込めて、なんとか上半身を起こすとふくらはぎで踏ん張り、勢いを頼りに堂島を目掛けて飛びかかった。


『別れた奥さんはあんた達のせいで自殺したんだろうがっ・・・ この鬼畜野郎・・
っ・・・・』


路上で転がりながら、殴り合う二人。

誰が呼んだのか、救急車のサイレンも聞こえ始める。


二人がふらふらと車道にまで飛び出し、堂島が脇道まで転げた梶原に掴みかかろうとした時・・


キーーーーーーーーィィィッ

『お父さんやめてぇっっ !! 』

女の声と、けたたましい急ブレーキ音、そして勢いよく飛びだしてきた茶色い毛の塊が、堂島に激しくぶつかり、見えなくなった。


突き飛ばされた堂島は梶原と反対側の道路に尻餅をついた。








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