ペロ

『こんにちは! 』

カーテンを開けた奈津美が顔を出す。

うたた寝をしていた梶原は、なんとなく恥ずかしくなり、眼を反らす。

『お父さんの具合は・・・どう? 』

それだけ問う。

『大丈夫よ、そんなの・・ たいした怪我じゃないもの。
梶原さんの方が大変だし・・

本当、ごめんなさい・・・ 』



深々と頭を下げる奈津美の髪が、肩に当たる。


『いいんだ・・・ 僕は・・
それよりペロは・・・ 奈津美さんのところにいたんだね? 』


「ええ・・・ 妹が死んだってわかった時、インターネットで調べたの。
もしかしてって、それで捜したの。」


『ペロは、どこにいたんだい?』

聞かなくてもなんとなく察しはついた。

「母の・・・ 住んでいたボロボロのアパートの前で、うずくまっていたわ。 」


あまりにも悲しい光景が目に浮かんだ。

『でもなぜ・・・ 妹さん、絵里香さんは・・・その洋子さんの娘なのに・・ 』


奈津美はふぅっと息を吐いた。


「私達姉妹ね、全然顔が似ていないの。 小さいうちから別々に暮らしてきたし、あまり考えないようにしてきたけど・・・」


美保子さんの顔が浮かんだ。


『そう・・・ 』



堂島を庇って死んだペロ・・・
ペロが初めて助けたのは、曲がりなりにも飼い主であった、堂島だった。


悲しい現実なのかな・・・

香港でのニュースをまた思い出していた。






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