ジャス

 残された首領格の男の顔色が蒼白になる。

 だが、何かに気付いた如く走りだす。

「…ま…待て!これでどうだ。」
 そして叫んだ。

 首領は女の腕を後ろ手に取り、刀を首筋に当てがった。

「し…新太郎さま…」
 女がたじろぐ。

「彩音!」
 不意を衝かれた新太郎が叫ぶ。どうやらその女の名前らしい。

「動くな!動くとこの女の命は無いぞ。」
 首領はジリジリと後退る。

 むら雲が月を遮り、辺りが闇夜に包まれた。

『な…何だこの重圧は?』刹那、首領の額に脂汗が滴った。

 いつの間にかその背後に黒い影が佇んでいる!
「だ…誰だ!」
 慌てて振り向いた。

「女子供を駆け引きに使うとは…くだらない男だな。」

「……!」
 首領は声にならない叫びをあげ倒れ込んだ。

 そして雲が過ぎ去った。
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