ジャス
翌日、京の通りは幾多の人々で溢れていた。
「どうしたんだ?この人集りは。」
野次馬が、手前に立つ男に訊ねる。
「何だ、あんた知らないのかい?新選組だよ。新選組が、この町に火を放とうとしてた連中の陰謀を阻止したんだよ!」
男が興奮気味に叫ぶ。
「この町に火を?いったい誰だその輩(やから)は。」
「決まってるじゃないか、長州だよ、長州藩。」
「へぇー。なら、凄い手柄じゃないか。」
訊ねた男が納得した。
「きゃーぁ!現われたわよ。」
「よっ!伊達男!」
「流石、新選組!」
人々の興奮が高みに達する。
人々の目の前に現われたのは、今回の活躍で波に乗る新選組の面々であった。
隊列の後方に新太郎の姿も見て取れた。
『ふうーん。中々やるじゃねーか。』押し寄せる観衆の中、ジャスが思った。
ジャスは人集りに身を同化し、行列を見守っていた。
“池田屋事件”幕府転覆を狙い京の町に火を放とうと目論んだ長州藩の尊王攘夷派を、新選組が踏み込み未然に防いだ事件である。
この事件を以て、新選組の名声は全国にとどろく事となる。
同時に、ジャス・新太郎・彩音。三人に取っての戻れぬ運命の始まりでもあったのだ。