ジャス
…心のどこかで『新太郎には平和に生きて欲しい』そう思っていた。
だが新太郎の『新政府を叩き潰す』との思捻が彩音の思いを遮(さえぎ)っていたのだ。
新太郎は立ち上がり、おもむろに部屋の入り口に歩み寄る。
「そろそろ行くか。大広間に我らが同士が待ち構えている。」
「新太郎!…もう一度聞かせて、本当に行く気なの?私はただあなたと平和に暮らしたいだけなの。…それでも夢は諦められない?」
彩音は新太郎の後ろ姿に問い掛けた。
「大丈夫、これで最後だからな。…彩音は心配などせず、ここで待っておれ。夜明け近くには我らの“理想国家”が幕を開ける。」
新太郎は、優しく語りかけると部屋を後にした。
『…やはり私に残された道はこれしか無いのね。』一人残された彩音が窓の外を眺める。
外は雪で一面の銀世界。そしていつかの様に、満月が辺りを照らしていた。