ジャス

 ホテルの大広間には幾多の猛者共が陣取っていた。

「いよいよこの日が来たな。…拙者(せっしゃ)この日をどれだけ待ち望んだか!」

「我らとて、思いは同じよ。憎き“薩長”に目にもの見せてやるわ!」

 ここにも維新に夢果てた者共の姿があった。

 大広間に集いしは、総勢百人。皆“新政府”に遺恨を残す者共だ。

 スパーン!襖を開き新太郎が現われた。

「おお、新太郎。待ちくたびれたぞ。」

「いよいよだな。」
 男達の激が飛ぶ。

「そうだ。この決起により我らはこの地に独立国家を設立する。」
 新太郎が叫んだ。

「うおーっ!」
 男達は拳を天にかざし呼応する。

「更に他の同士と“アームストロング砲”を乗せた船がそろそろ横浜港に入艦する頃だ。それも徳川の“軍用金四百万両”を抱えてな!」


 徳川の軍用金四百万両。
 江戸城開城の折り、忽然(こつぜん)と消えた軍用金。現在“徳川の埋蔵金”と呼ばれるものだ。
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