ジャス

 その頃、新太郎はまだ官庁内にいた。

「知事はどこに居るんだ!」

 新太郎達は既に官庁を占拠しつつあった。だが知事の姿はどこにも無い。

「留守なんじゃないか?…作戦は失敗か…」
 仲間が呟く。

「…まだ分からん。とにかく手当たり次第に探すんだ。」
 新太郎の顔にも焦燥(しょうそう)感が浮かぶ。

「新太郎!大変だ。」
 突然別の仲間が走り寄って来た。
「どうした!?」
 新太郎が視線を向ける。

「船が…仲間の船が、港で沈没した!!」

「何だと!」
 新太郎が叫んだ。

 頭の中が空白になるのを感じる。世界が音をたてて崩れていくようだった。

「…な…何だあれは…」
 仲間が窓の外を見つめ呟く。

 新太郎も何げに視線を向けた。

「…な?」

 窓の外、巨大な竜巻が官庁に近付きつつある!

「作戦は失敗だ。とにかく逃げよう!」
 堪らず仲間が叫ぶ。

「ああ…」
 新太郎は絶望混じりの声で返した。
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