ジャス

『…彩音…』不意に彩音の脳裏に声が響く。

 新太郎の顔に笑顔が浮かんだ。…いつかの様に屈託(くったく)の無い笑顔が…


 ドスッ!


 鈍い突き込み音が響いた。

 純白の世界に、赤い牡丹の如く血の花が咲く。

 短刀がスルリと落ちた。
「…良かった…新太郎を…殺さずにすんだ。」
 彩音のかすれるような声が漏れた。

「彩音!」
 新太郎はその身を抱き抱えた。そのまま二人座り込む。

「…悪かった…他に術が無かった…」
 傍らでジャスが刀を下ろした。

 刀から彩音の血が滴った。一瞬早く、ジャスの刀が彩音の身をとらえていたのだ。

「彩音、何故だ!お前はいつも優しかったではないか…いつも『危険な事は止めて、平和に暮らそう』と言ってたではないか。…俺が新世界を築こうとしてたのは…お前の為なのだぞ。」
 新太郎は心の内をさらけだす。

「…私は最初からこの至宝を探す為に…この地球に来たのよ。…そしてあなたを利用する為、あなたに近付いた。…でもあなたの優しさに触れ、その目的は…どこかに消え去っていたわ…」
 瀕死の身で彩音が囁く。
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