ジャス

 スッ。突然後方の巫女が立ち上がった。

「…?」
 風牙は不思議に思いつつも棺を開けた。

「…な?…これはどういう事だ!」
 そして叫ぶ。瞬間、ビブバの顔が蒼白になった。

 棺の中に生け贄の姿は無かったのだ。

 刹那、青白い光が煌めいた!

「ぐあーっ!」
 風牙が身をよじる!天を覆う黒い闇が騒めいた!

「ひぃーっ!」
 ビブバは転げる様に祭壇を掛け降りていく。

「き…貴様は、巫女では無いな!」
 風牙が巫女を睨む。

「ははは、今頃気付いたか。」
 巫女は衣服を脱ぎ捨てた。それはジャスだった。


 壇下でその様子を眺める人々は、パニックに包まれていた。

「どういう事だ?ビブバ様。」
 人々はビブバに喰い寄る。

「…あの男に頼まれたのだ。…アロマ様を解放して、風牙様の元に連れていけと…」
 ビブバはグッとジャスを見据えた。

「…だが、こんな事になれば風牙様が黙ってないぞ!」
 人々の悲痛の叫びがあがる。
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