ジャス

 人々の願いは些細なもの。

 太陽の恵みで生命を輝かせ、雨の慈しみで渇きを潤し、風の爽やかさに気持ちを落ち着かせ、月の静けさに心を和ませる。

 そんな普通の日々だった。



「な…何故だ…ワシの…肉体が…」
 かすれる様な声が響く。
 風牙の体にはザックリと刀が穿(うが)たれていた。

 その体からユラユラと黒き陽炎が立ち昇る。

 ジャスはただ静かに目を閉じた。


「その…刀はまさか…」
 風牙が刀を見据える。

「…気になるか?…この刀は“魔王の太刀”…“覇王サタン”の忘れ形見だ。更にリバティによって“血継ぎ”もしている…」


 かつて大銀河に名を馳せる“覇王サターン”というスーパーヒーローがいた。
 彼は戦争により銀河連邦と対立する。

 その愛刀が魔王の太刀、銀河パトロール隊員を数億と切り裂いた妖刀だ。

 限りなき妖刀は時に神さえ切り裂く威力を得るのだ。
< 74 / 79 >

この作品をシェア

pagetop