浅葱色の瞳に
それならばあたしは、幕末史のスポットライトを浴びた敬うべき人物に殺される方を切実に希望する







「あたしは新撰組の全ての歴史を知っているんです……ただ色々と問題があり、お教え出来ないのが残念………」





殺那








目の前に居た土方さんは何故か隣に移動していて




何か違和感を感じ視線を下へずらすと、顎の下には切れ味の良さそうな刀身がキラキラと輝いていた



いつの間に…








「言え」





たった一声



土方さんの、たった一声が耳に入ると身体中を悪寒が包むと共に、生きた心地が一切しなくなった




低くくぐもった、それでいて大変気迫のある声色は平和ボケしたあたしに恐れおののかさせる効果が充分あった



頭の中では何故か自分の首を跳ねられる近い"未来"が繰り返しビジョンとして流れ



尋常じゃない量の冷や汗は畳を湿らす




ああ





此れが殺気というものか



未来の日本では味わえないだろう





初めて感じた間接的な"死"



其は今まで感じたことのない、"恐怖"…




今の今まで目の前の"鬼"に、あれ程斬り殺されて死にたいと望んでいたというのに





情けない





今、あたしは強く願っている







"死にたくない"と…
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