浅葱色の瞳に


――――――………



正直、あの夷人には驚かされた



鞠絵と言ったか…未来から来たなんて馬鹿げた話は信じざるを得ない状況になった



物音ひとつせずに俺の前へ突如として現れ

容貌は夷人、なのに言語は多少の突っ掛かりは気になるが寸なりと会話が成り立つ


…そして何より隊内の粛清が今日行われるのを知っているのは幹部のみの筈だった


長州の鼠は既に逃げているが…


今頃は山崎が"始末"を終えたに違いない



しかし疑いはまだ晴れない…

念の為、あの夷人には見張りを付けて置いてある

妙な真似をしたら即座に切り捨てろと伝えて




道場へと向かう渡り廊下を進みながら、思い出すのは先刻の抜刀…



あの女は"死ぬ気"だった












"総司"と同じ目をしていた―…














死を覚悟し、何もかも全てを諦めた目…



全てを吹っ切り、余裕すら感じられた


"生"にすがり付く者には決して出来ない目

死を恐れない強い決意、そして覚悟




其は時として自覚のない狂気すら生み出す


即ち、両刃の剣





本人は無自覚の様だが…
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