浅葱色の瞳に
前々から目を付けていた西新宿の廃ビル


非常階段に繋がるドアの鍵は予め壊しておいた




何事も用意周到


計算高いのも昔からだ




錆び付いているのか、ギギ…ギ…と不快な音を立てながら扉は開く





…カン、カン、カン、カン…



チタン製特有の金属音は辺り一帯に思ったよりも大きく、そして無機質に響いて




その金属音は階段を昇り切った後も暫く、鼓膜に根付いて離れなかった








流石に5階建ての屋上ともなれば風が強い


おまけに全身を突き刺すような痛みを伴う冷たさで、思わず首に二重に巻いたマフラーに顔を埋める



貯水タンクを縁取ったコンクリートの段差に腰を下ろし、バッグの中から白い錠剤が5~6粒入ったパケを取り出す


この日の為に<仕入れた>ものだ




錠剤を取り出し、まるでビタミン剤でも飲むかのように口の中へ放り込み、奥歯で噛み割った




ガリッと、聞き慣れた口内からの音の筈



…なのに、今回はやけに重たく頭に響く





膝を抱えて目を閉じると








思い出すのは、子供の頃に思い描いた小さな夢
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