浅葱色の瞳に
「…其だけでか?」




「はい」




拍子抜けした



産まれたばかりのややでも有るまいし、まさかそんな事を言われた位ェで気を失うとは



道は険しい


あの女が此の御時世を渡り歩くにゃ大層な苦労が目に見えて映る



どうしたもんか





「……逸れと」



斎藤の声で我に帰る



「此れは私の推測に過ぎませんので戯言と捉えて頂いて構いませんが……あの夷人がろくでもない企みを目論んでいる様には見えませんでした」



「何故そう思う」



「…もしかするとあの夷人は阿片の類に手を出しているやも知れませぬ」



「阿片…?」




阿片



ケシの実から取れる麻薬の一種


安政五年に安政五カ国条約で輸入は禁止されている筈だが…



「何故わかる」



「瞳孔が常時開いているのは依存者特有…手足の震え、そして突拍子もなく取り乱す……中毒者との接見は慣れております故」



「……お前はどう考える」




「……はて、何の事やら」



「此の夷人の処遇についてだ」



ちらりと夷人に目をやると相も変わらず規則正しく寝息を立てている



「我等の前に立ちはだかるのならば私が斬り捨てるだけの事……さすれば貴殿の邪魔にはなりますまい」
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