浅葱色の瞳に
「…何してるんですか?」



ふと疑問に思って彼女に問い掛ける




京の冬は早く、9月と言えど空気は冷え込む


薄い浴衣一枚で外に出るなんて肌寒いだろうに





「……月をね、眺めてるんですよ」





そう言って優しく微笑むと、あたしを見つめていた彼女の視線は首ごと月に向いてしまって


彼女の澄んだ瞳は月に独り占めされた




「綺麗でしょう?今晩は冷え込むから、空気が澄み切って一段と美しい……あなたもそう思いませんか?」




「…気にして見たことがないです、月なんて」




「……何故でしょう?」




「あたしの住んでた所は…空気が汚くて月はぼやけてしまう……立ち止まって気に掛ける程綺麗に光輝かないから……人は気付かないんです………それこそ星なんて見えない」





空気に"味"があることをこの世界に来て初めて知った



人は利便性と合理性を求める余り、本来の地球の美しさと色を忘れている事も知った



その内地球はグレーの鉄球のようになるのではないのだろうか



強調的かつ攻撃的な色ばかりが交錯し溢れていて




地球温暖化だとか、水位上昇だとか




確かに地球は人に侵食され、蝕まれ、おかしくなってる




テレビや教科書で素通りしていた事を今、改めて実感した
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