浅葱色の瞳に
暗闇にまだ目も慣れていない




果てなく続く闇の中で少々気味が悪くなってくると、暗闇の真ん中に突拍子もなく、ぽうっと小さな灯りが現れた




「ごめんなさい、灯火具を忘れてしまって……ふふっ…怖かったのでしょう?」




「……人魂かと思いました」



「ぷぅっ!!うふふっ…あなたって本当に面白い方……もう、あんまり笑わせないで下さいよ……さあいらっしゃい」



彼女はまたもや悪戯に笑う



心なしか彼女が声を潜めるから、あたしも釣られて小声になった



「あなたの髪はまるでお月様の様だから、夜中でもあなただって直ぐにわかりますね」



「え…そんな、絶対嘘……こんな真っ暗で見えるわけないじゃん…あなたはわかるんですか?」



「勿論ですよ、天地が逆さまになったかと思いました……お月様色の髪……かぐや姫はあなたの方では?」



他愛のない話をしながら長い廊下を彼女の後ろに着いてゆっくりと進んでゆくと、障子戸の隙間から明かりが溢れる部屋が目についた



すると彼女はその部屋の手前で立ち止まり、くるりと踵を返してこちらに向き直った



「そう言えばあなた先程、私の名前を問いてましたね」



にっこりと口角を上げた彼女を見て


…心臓が跳び跳ねた




清楚な正統派美人




女のあたしでも胸がときめいてしまう




さぞや可憐で可愛らしい名前なんだろう
< 44 / 75 >

この作品をシェア

pagetop