浅葱色の瞳に
「私の名は沖田総司と申します…どうぞお見知り置き下さい」



……蝋の炎に明るく照らし出され、"彼女"の満面の笑みが確認出来た



「…えっ…沖田総司って…あの沖田総司?……え、ええっ!?」




"彼女"だと認識していた目の前の人物がかの有名な"沖田総司"だったとは…



「あらあら、私の事をご存知なのですね……お噂は少しだけ聞いてますよ…此れからもっと詳しく聞かせて貰いますがね」




頭が混乱し、あたふたとするあたしを尻目に"名も知らぬ彼女"改め"沖田総司"は土方さん、と小さく戸の向こうへ声を掛けると音も無く障子戸をススッと引いた



僅かに溢れ、廊下に細く線を引いていたオレンジ色の灯りは、障子戸を開け放された事により照らし出す範囲を拡げ、灯りは中庭に置かれた置き石にまで届いた




「近藤さん、土方さん、お連れしましたよ……さあお入んなさい」


「え、あ……はい……」



驚きを未だ隠せないあたしを部屋の中に引き入れようと、沖田さんは優しく微笑みながら促す





綻んだ笑顔をまじまじ見ていると、あの沖田総司だとは……まだ信じられない…




女にしか見えない…



沖田総司はひょっとして女性ではなかったのか



そう思わなきゃやってらんないかも……





女としての自信を極端に大きく無くし、項垂れながらも部屋の敷居の中へと足を踏み入れた
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