浅葱色の瞳に
「遅ぇ、待ち草臥れてた」




部屋の中には苛立ちを露にする土方さんと





「おお、此は此は…歳の言う通りだったな」





土方さんの真向かいにもう一人、この世界で初めて出会う人物



……いや、あたしはこの人の顔も見知っている



この目の前に佇む人物の写真も、土方さん同様に未来の日本に現存しているからだ





大きく強張った顎を始め


屈強な身体付きに似合った逞しい肩幅は目を引く


対称的に優しげな目元は大変おおらかそうな印象が見受けられ


綺麗に結い上げられた髷を見ると、ここは江戸時代なのだと染々思う





あたしはこの人の名を知っている



この人は





「……近藤勇…」





…はっと口を押さえた時には、既に声に出して言い終わった後だった



「…てめぇ…」



それまでだらしなく胡座を崩していた土方さんは片足立ちになって身を乗り出し、あたしに向かって怒鳴り散らす



「誰に口効いてんだ!身の程を弁えやがれ!」



案の定土方さんの檄が飛んだ



「まぁまぁ……まだ歳半ばも行かない娘っ子さんじゃあないか…大人気ないぞ、歳」




近藤さんが宥めたお陰か、まだ何か言いた気な顔をしているものの、土方さんは元の定位置に荒々しく腰を落とした
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