浅葱色の瞳に
「……え?…」





……言葉に詰まった




近藤さんの言う通りなのは確かだった



あたしが元居た時代の最後の記憶を遡り、その時の状況を此の時代で再現すれば必ずしも…とは言い切れないが元の時代に帰れる可能性が出てくる






…けれども再現出来ればの話





元居た時代であたしが最後に覚えている感覚は





身体に大きな衝撃と






真っ暗な世界…








「…どうした?覚えていない筈は無いだろう?…案じているのなら無用な心配だ…他の誰にも口外するつもりはない…なぁ、総司…歳も」




「勿論です…こう見えても口は堅いんですよ、私…ねぇ土方さん」



「………」





黙りこくったあたしを不審に思ったか、近藤さんは優しげな口調で問い掛けてくれ、沖田さんと土方さんにも同意の意を促す




けれどもその優しさは今のあたしにとっては重たくのし掛かる負荷でしかない




近藤さんの思い遣りを感じる処か鬱陶しく思ってしまう…






…けれどもそう思ってしまうのは致し方無かった





…勿論"全て覚えている"





けれども再現しようにも"一か八か"になってしまうのだ



飛び降りて元の時代に戻れるのなら世話無いし、直ぐにでも覚悟を決めれる



けれども飛び降りた処で飛び降りた"だけ"で終わってしまえば…?



必ずしも元の時代に戻れる保証なんて無い





…〈薬〉を使えばこそ幾らか気は大きくなるけれど…あたしは其処まで命知らずでは無い





そもそもあたしなんかが簡単に忍び込める高層建築物が此の時代に用意されているのだろうか…
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