浅葱色の瞳に
「何とまぁ……はぁ…此れは又…随分と大きく出たものだな、歳」


近藤さんは額に手を当て半ば呆れているかの様で、今にも天を仰ぐ勢いだ



それ程迄に土方さんに打ちひしがれたのだろう、微量の苦笑いも伴っていた




「他の隊士は兎も角…私達組幹部の者でしたら口外の心配は無用ですが…然し其では土方さん、貴方の立場はどうなるのですか?」



ちらりとあたしに目をやり直ぐ様、打ちひしがれ言葉に出来ない近藤さんに代わり、土方さんに反発とも取れる意見を述べたのは沖田さんだった






「…幾ら貴方程の人でも…今回の事は余りに度が過ぎる………此の隊を縛り統率を図る法度の数々…貴方が作り上げたのですよ?…其が今や意味も為し得ていないではありませんか…隊士達の顰蹙から逃れられないのが目に見えて私には判る…其が判らない程、貴方は馬鹿では無いでしょう」



沖田さんから笑みが消えるという事はどの様な意味を為すのか



焦燥の色を隠すかの如く饒舌になる沖田さんは胸中穏やかでは無いだろう、苛立ちさえも感じ取れる




そんな沖田さんを嘲笑うかの様に土方さんの余裕綽々の面が嫌が逐うにも目についた





「馬鹿野郎、だからこその局中法度だってんだよ…ったく…今使わずして何時使うってんだ…」



「…?」



土方さんの思惑がどうも読み取れない…



此の人は一体何を考えているのだろうか



まるで他人事の様に傍観していると…明らかに沖田さんが正しく、如何にもな正論を披露していた



隊士に化けた得体の知れない夷人の女を屯所に匿う等…隊の方向性や考慮に不信感を募らす隊士が続出する事と容易に想定出来る…



況してや口を滑らせば切腹だなんて…

暴動へ発展しないなんて…とてもじゃないけれど胸を張って言えやしない
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