浅葱色の瞳に
「す…っごい……土方さん、凄い…」



口に出すつもりは無かったのだけれど、自然に声が出てしまった



圧巻するとは正にこの事



土方さんはあたしという人間から尊敬される要素を充分に持ち合わせいる



頭の回転の速さが尋常ではない…


良くもまあ、何通りと選択肢が思い浮かぶものだ



後に日本史上に大きく名を残す男だというのも、やはり頷ける





「……ちっ………お前ェも精々ばれねェようちったァ気ィ張るんだな…こちとらお前ェに構ってられる程、生憎暇じゃねェからな」



「…はい、気を付けます」



苛立ちの象徴か…はたまた事が一旦解決した安堵感からか…


土方さんの眉間には皺が深く刻み込まれ、言葉に合い混じり溜め息とも取れる吐息が確りと耳に残る





…どうして見ず知らずのあたしなんかの為に此処まで手を回してくれるのだろうか



刺々しい言葉とは裏腹に土方さんからは受け止めきれない程の配慮と気遣いが充分に感じ取れる



例え、その裏に陰謀や策略が隠されているとしても…



此の状況下では感謝せずにはいられない





………




陰謀…策略…





なんて…無い、よね…





…気にし過ぎだ



何時から人の善意を信じられなくなってしまう程、疑り深くなったのだろう



なんて罰当たり






「話は纏まった様ですね……其では早速、鞠絵さんの召し物を用意致しましょう…鞠絵さんの寝所は………土方さんの部屋で宜しいと?」


「ああ…総司、悪ィが先に鞠絵を俺の部屋に連れて行ってくれ…俺ァ、ちっとばかし勝っちゃんに話がある」



「わかりました…鞠絵さん、お部屋へご案内致しましょう…さあどうぞ」
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