浅葱色の瞳に
「即ちあの餓鬼の話は誠となった訳だが……簡潔に言やあ、あの餓鬼は此の組織の末路を知っているってこったァ」




「ま、まァ…我々の名を存じている位なのだから…我々は歴史に名を残す程の貢献と働きをしたに違いない…いやはや、結構な話ではないか!」




「まだわかんねェのかあんたは…つまり此れから起こりうる歴史の流れをあの餓鬼は知っているって事だ…」





「…!」





「…我々の名が歴史上へ刻まれているとなれば激しい事変や一揆が起こったに違いない……あの娘の存在が長州勢等に知れ渡れば……つまりあの娘の存在が幕府の存続を大きく左右する…」




「流石は山崎、頭が切れるな………それに比べて………勝っちゃん、ちっとは頭に入ったか…」





「………あの娘を匿ったのは…我々…此の組織の保守を案じての事だったのか」




「そういうこったァ…あの餓鬼がどうなろうと知ったこっちゃねェが…こうもなれば話は別だ、俺ァあの餓鬼を"保護"している訳じゃねェ、"監禁"だ………極めて緩いがな…言うなれば"捕虜"だ」





「歳…もう少し言葉を選ん…」
「俺は近藤さん…あんたの為にしか動くつもりは無ェ…今までも、此れから先も、だ…あんたの立場を脅かす輩が居るってんなら誰であろうと容赦はし無ェ…餓鬼であろうと女であろうと」





「………」



「………」






「幸い、あの餓鬼にはそんな気は更々無いようだしな…其れに少なからずあの餓鬼には"利用価値"も見出だした…その時は働いてもらうさ、新撰組の為にな…其れまでは精々"特別待遇"してやるつもりだ………話は終わりだ…山崎、御苦労だったな…下がれ」



「…はい」





「俺ももう戻るぜ、明日また話を纏める」







「…歳…お前は私でも怖いくらいの策士だな…」









部屋を後にしようと障子戸に掛けた手は勝っちゃんの一言で静止する










「…其れも此れもあんたの為さ」







………嫌われ役は俺一人で充分だ、ってな
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