浅葱色の瞳に
何故あたしなのだろうか



あたしがこの時代に飛ばされた事に果たして何らかの意味があるのだろうか
それとも無意味な時の悪戯なのだろうか



何故寄りによってこの幕末と言う時代なのだろうか


何故東京にいたあたしが京都へいるのだろうか



偶然なのだろうか
それとも必然なのだろうか





疑問は尽きる事なく後から後から押し寄せる


けれどそれは自分の運命を少しでも受け入れられた証拠…



心にほんの少しだけど、余裕が出来た証拠



問題が一つ片付き、解決し、落ち着き…
物事を深く考えられる様になった証拠…



見知らぬ時代で
見知らぬ土地で



教科書の中でしか知らない偉人達は親身にもてなしてくれ、衣食住を用意してくれ、文明が進化し続ける時代に産まれた人間である自分でさえ信じられない様な出来事を彼等は信じてくれた



少なくとも"居場所"は出来たのだ





それでも時の流れは変わらない



もしも元の時代に戻れたとしたらどうなっているのだろうか

この時代で過ごした時間の分だけ進んでいるのだろうか
やはりあたしがこの時代に来てしまった時点で歴史は変わってしまっているのだろうか…


物理学をもっと勉強しておけば良かった…
そんなことを後悔しても何も変わらないのだけれど…





それでも早く戻れるに越したことは無い



あたしのせいで産まれてくるべき人間が産まれてこないなんて嫌だ


あたしのせいで歴史が、時代が…狂ってしまうなんて嫌だ



それを避けるには歴史にまだ何の変化も生まれていない事を祈り、僅かな可能性に賭けて一日でも早く元の時代に戻らなければいけない







晴れて元の時代に帰れたら



またあたしは自分で自分の命を絶つのかな












………なんて疑問は頭の片隅に生まれる事も無く








自分の事を考える余裕が無い程、あたしは切羽詰まっていたのだろうか














その時は思い起こす事さえ無かった
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