恋は盲目
…―カランカラン
七時半の五分前、すでに彼の姿が会った。
この前とは違う高そうなスーツに身を包み、まわりの視線は独り占め。
社長なのに何でこんなとこにいんのよ。
改めてみるとなんだか喫茶店に似合わなくて、フッと笑ってしまった。
「遅くなってすみません。」
一言声をかけると、ん。とだけいい、席をたった。
後ろをついていくと、店を出てすぐに車があった。
「乗れ。」
「はい。」
なんだかわからない重い空気にため息がでる。
「あの…。」
「なんだ?」
「どこに行くんですか?」
「腹が減った。食事に付き合え。」
「はい。」
聞く前にすでに目的地に向かっているから確認はいらない。
都合のいい女だもん。
彼のいうようにしてたらいい。
そう考えていたら目的地についたらしい。
「行くぞ。」
そのまま車から降りて中へ行く彼を慌てて追い掛ける。
目の前には有名な坂口グループのホテル。
食事のあとは……やっぱりそういうことなんだろう。
やっぱり私はそれだけ―…なのだ。