恋は盲目
わかっているけど、なんか悲しい。
私だけを見てくれる人はいないのかな。
私には恋愛はできないのかも。
どうして皆が普通にしていることが私にはできないのだろう……。
私は淋しい気持ちでいっぱいだった。
「どうした?」
目の前にはエレベーターがあって、顔を覗きこまれた。
「い、いえ。なんか高そうなとこなんで、私なんかいたら場違いで恥ずかしくて……」
それは本当。
さっきから視線が痛い。
場違いな女に、イケメンの横のかわいくない女。
帰りたい…………
「気にするな。」
そういって私の頭をポンと撫でてエレベーターがタイミングよくきた。
彼の手にちょっとだけホッとしてしまった。
エレベーターで30階にあがると大人の雰囲気漂うレストランがあった。
中に入るとボーイさんがすぐに案内してくれる。
少しだけ個室っぽく作られた場所に、全面ガラス張り。
目の前に広がるいっぱいの夜景に私は思わず見とれてしまった。
「う…わ〜……キレ…イ……」
「とりあえず座ろうか。」
見とれる私をスムーズなエスコートで席へと導く。
絶対に女慣れしていると思う。
この外見に坂口グループの社長をしているといえば
彼を自分のものにしたいという女性は五万といるだろう。
坂口さんはどうして私をここに連れてきたんだろう。
しかし、隣に座るこの『坂口涼太』に出会わなければ二度とくることはなかっただろう、この場所に、一度でもこんな体験ができて正直嬉しいと思いつつ
運命とはわからないものだと考えていた。