恋は盲目


「行くぞ」


いつものように喫茶店からでようとしていた彼を初めて止めた。



「待ってください。…………今まで何していたんですか?私ずっと待ってたんです。遅れるなら一言連絡くらい入れてくれても良かったんじゃないですか?」



私は冷静に淡々と話した。


でないと泣いてしまいそうだったから。



平静なんて保てる自信なんてないの。



じっとグレーの目が私を捕えて放さない。



しばしの沈黙に背中にツーっと汗が流れるのがわかる。



「大事な用が入って忙しかったんだ。待ちたくねぇなら、待ってないで帰ればよかったんじゃね。」




「………は?」



「俺は別に待ってろと言ってない。時間と場所を指定しただけだ。時間にこない…それなら帰ればいい。俺は別に構わない。」



な、なに?!その勝手な言い分!!



「はぁ?!っな、なんなの?!」



「だから言っただろ、都合の良いときに会う関係だ、と。俺が都合が悪けりゃ会わない。お前が待ってようと、なかろうとどっちでも変わらない」




っ!!



「バ、バカにするのもいい加減にして!!」



少しでも今までの私への態度に優しさがあったと期待していた私がバカだった。



そうだ。最初から言われていたのに。


“都合の良い女”



彼のなかではただそれだけでしかなかったのに。



私だけ、こんな気持ちになって、会うたびに彼の優しさだと信じそうになっていたのに……。




結局は現実は現実のまま。


現実から目を逸らし、美化された恋は



蓋を開けてみればしょせんただの遊びの関係。



いや…遊びよりも淡泊なものだった。




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