恋は盲目
真っ直ぐ帰りたくなくて、街をフラフラしてみる。
6時半。
仕事帰りのスーツをきた人や学校帰りの学生で駅周辺はたくさんの人がいた。
1人でフラフラしててもバカみたい。
帰ろう。そう思い来た道を戻ろうと振り返った。
その先にいた人物をみて逃げたい衝動に駆られた。
「おっ?琴じゃん?」
………足がすくんで動けないし、声もでない。
なんでよりによって一番会いたくないヤツに会ってしまったんだろう。
「は?シカト?……ま、いいや。琴暇そうじゃん?今から久々付き合わねぇ?」
そういって近づいてくるあいつを見ながらも動けずにいた。
「な?いいだろ?今日だけだから」
いつの間にか近くまできた賢くんに耳元でつぶやいた。
ぞくっと体が震え、背中に冷たい汗が流れるのがわかる。
そんなことをお構い無しで賢くんは私の手をとり歩きだそうとする。
握られた手に嫌悪感が溢れる。
前は何とも思わなかった賢くんの行動一つ一つに今は私の体が拒否反応をおこす。
「……め…て…」
声が震えてうまくでない。
「は?」
眉間にシワを寄せて上から睨むように見る。
「や…めて。はなして。」
さらに不機嫌になることが分かっていてもきちんと言わなきゃと思った。