愛へ
「相沢~」

放課後、あたしがバイト先へ行こうと立ち上がったとき、藤堂誠に呼び止められた。

間延びした声に振り向くと、藤堂誠は何で帰るの、と聞いてきた。


「今からバイトだから時間ないの」

「そういうの、早く言えよ」

「いつ、あんたに言うタイミングがあったっていうの」

「それもそうだけど、てか、女の子があんたとか言わないの。付き合ってるんだから、誠って呼んでよ。あ、オレは愛って呼ぶからね」

なんだか、いつもと違う。

いつもなら、あたしのペースでことが進んでいくから、みんなあたしのことを名字で呼ぶし、あたしもそれで良かった。

名前で呼ぶなんて特別なことはしたことはなくて、あたしは自分のペースが崩されたことになんだかイライラしていた。


「じゃあ誠、あたしは今からバイトなので、帰ります、さようなら」

なんだか、むかついた。

男なら、誰だっていいと思っていたのに、こいつは、駄目だ。

見た目さえよければ別にいいと思っていたのに、こいつだけは、例外だ。

一緒にいると、イライラする、こんなタイプの人間は初めてだ。

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