HAPPY!!

「その上、入り口から便器まで100メートルあるんだぜ。」


えへん、とモップを置いて木内が威張る。
自慢するところなのだろうか。


「やだ、毎日が100メートル走じゃん。朝から大変だね~。」

「だからおれ、100メートル2秒で走れる。」

「すごっ!!」


それができたら世界記録は木内が保持することになるのか。
と思いながらも、素直に驚いておく。


「でも、皆に悪いから、体育の授業では本気で走らない。」


偉いだろ、と言いたげだったので、

「偉いね。」


とだけ言ってやる。

そろそろ反応に疲れてきたのも事実だ。


「不便なのは、トイレットペーパーのある場所が入り口のすぐ横で、手が届かないんだよね。」

「うわ~。不便。」

「だから、トイレ入ってすぐペーパー持って便器まで100メートル走。」

「大変だね~・・・・・。」


絶対トイレをそんな風に広くするのは間違いだ。
木内、いくら冗談でも、やりすぎだ。

「それでな、おれんちのトイレ、天井ないの。吹き抜け。」

「消臭剤なくてすんでいいね。でも、雨の日はどうするの?」


あたしが素朴な疑問を投げかけると、木内は一瞬考えた後、


「傘持ってトイレ。」

「屋根付けろよ。」
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